発言席
地区診断と花嫁
稲葉 峯雄
1
1特別養護老人ホームガリラヤ荘
pp.297
発行日 1978年5月10日
Published Date 1978/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205977
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私はいま,予讃線下り列車の中でこの手記を書いています。愛媛県の南予と呼ばれる終着駅宇和島までの旅です。この列車は,10年余り,地区診断で農漁村の部落を訪ねるために乗りつづけたものです。今日はその地区診断の中から生まれた保健婦の結婚式に出かけるところです。仲間を代表して祝辞も言わなければならないことになっています。仲間というのは,花嫁が看護学生時代からグループで農村医学や地区診断の研究をつづけている「よもぎ会」という若い保健婦の集いと,「農村健康問題懇談会」という,農村の健康さから学んでいる自由集会のいろんな立場の人たち(農家の主婦もいれば大学の先生や学生もいる)です。
彼女はその仲間の人たちとの交わりの中で保健婦の技術や資格の他に,人間としての目的や教養,そのための草の根の運動を学んでいたと思います。そして都会生活を捨て農村の保健婦になって3年目です。彼女の選んだ農村は,地区診断で健康な町づくりをしているところでした。隣町には県立農村医学センターもありました。
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