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はじめに
脳卒中は局所脳損傷の結果として,運動,歩行,言語などの機能障害を後遺症として残し,長期に残存する身体障害の最大の原因疾患である.脳卒中急性期にみられる機能障害は,通常,回復期にかけて何らかの機能回復が認められることが多い.例えば,片麻痺が軽度であれば数週間でほぼ完全に回復することが多いが,片麻痺が重度であれば数か月かかって不十分な機能回復がみられるにすぎないことが多い1).
このような脳卒中急性期から回復期にかけてみられる機能回復は,急性期治療により脳血流障害や脳浮腫が軽減されてもたらされる効果と,さらにその時期を越えてみられる機能回復には,いわゆる脳の可塑性が関与していると考えられている.脳卒中により脳の神経回路の一部が損傷された場合,通常は副次的,潜在的である神経回路の動員や代償,あるいは,新しい神経回路の形成を通して,障害された機能を回復させることが可能である.このように脳卒中後の脳が機能と構造を変化させること,すなわち,脳の再構築が実際に起こることが知られるようになった2,3).
近年,positron emission tomography(PET),functional magnetic resonance imaging(fMRI),near-infrared spectroscopy(NIRS)などの非侵襲的脳機能イメージング法の発達により,ヒトの脳の再構築を観察することができるようになった.われわれは,fMRIやNIRSを用いて,脳卒中後の運動機能の回復に伴って起こる脳機能再構築を画像化し,脳卒中後の運動機能回復のメカニズムを解明しようと試みており,以下にその概略を紹介する.
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