Japanese
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特集 社会性と脳
利他的行動の脳内メカニズム
Neural mechanism of altruistic behavior
森島 陽介
1
Morishima Yosuke
1
1Translational Research Center, University Hospital of Psychiatry, University of Bern
1Translational Research Center, University Hospital of Psychiatry, University of Bern
キーワード:
社会的行動
,
神経経済学
,
行動経済学
,
脳ネットワーク
,
脳機能イメージング
Keyword:
社会的行動
,
神経経済学
,
行動経済学
,
脳ネットワーク
,
脳機能イメージング
pp.29-32
発行日 2018年2月15日
Published Date 2018/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200748
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Ⅰ.利他的行動をどう定義し測るのか?
利他的行動とは自分の不利益を省みず,金銭や労力のコストをかけた他者の利益になる行動を指す。他者の利益になる行動の例は動物では養育や食糧の共有などがあり,ヒトでは養育や寄付,労力の提供,臓器提供などの様々な形の行動がある。狭義の利他的行動の定義では自分への食糧,お金,時間,労力,名声などの金銭的,非金銭的な利益が全く期待できない状況にもかかわらず,お金,労力,時間などのコストを使い他者の利益になるような行動を指す。より広い意味では,自分のコストを用いて他者に利益をもたらすような行動全般を指す。
他者の利益や生存のために自らがコストを払うのは,一見すると個体の生存には非常に不利に働くため,利他的な個体は進化的に淘汰されるのではという素朴な疑問が起こる。しかしながら,種もしくは集団という観点でみてみると,親が子どもの養育に深くかかわることは次世代の生存率の向上に大きく貢献する。つまり,進化的な環境への適応度の観点からみると,利他的行動は個体レベルでは環境への適応度は必ずしも良くないが,種・集団のレベルでは環境への適応度を上げるため,利他的行動を行う個体が淘汰を受けずに現在に至ったと考えられる1)。
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