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編集後記
吉
pp.488
発行日 2009年5月10日
Published Date 2009/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101519
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4月13日,桜が満開の仙台に弊誌編集委員を訪ねたところ,興味深い話題がでたので,ご紹介したいと思います.昔,村落共同体が機能していたころ,「呆け」,「阿呆」と呼ばれた人達は,差別を受けながらも村社会のなかに一定の居場所があり,家族や地域の人々の援助を受けながら生活していました.そして,今,人格的配慮のためか,「呆け」が「認知症」に,「阿呆」が「統合失調症」というように,「症」が付き,医学的治療やケアの対象になり,病院や施設に入ることが増えました.「疾患」として社会的に認知され,近代医学の対象になるのはメリットだと思いますが,村社会で,家族や地域の人々によって無意識に行われてきた「支援」や「ケア」がなくなり,結果として,症状が悪化するということもあるのではないでしょうか.「疾患」や「症状」にはさまざまな要因が絡み合い,医学的アプローチだけでは対処できない事例も多いと思います.医学的な治療だけに頼ってしまうデメリットもあるのではないでしょうか.今更,村社会に戻ることはありえませんが,今の社会での全体な支援とは何なのか改めて考えてみたいと思います.
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