Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「誰も守ってくれない」―特異犯罪加害者の家族はどんな仕打ちを受けるのか
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.477
発行日 2009年5月10日
Published Date 2009/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101516
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受験生である18歳長男が,小学生姉妹殺害事件の容疑者として逮捕される.さて,残された両親,妹はどのような境遇に晒されるのか.その有様をドキュメンタリー的手法で描いたのが,「誰も守ってくれない」(監督/君塚良一)である.
長男の発達障害,人格障害などの特異的な性質についての言及はない.負の環境因子として挙げられているのは,父親の体罰である.父親は受験勉強の指導をしているが,期待どおりの点数を取らなければ暴力を振るう.観る側の想像に任せるなら,特異的な性質をもっているのは父親のほうであり,その下で長男は精神に変調を来したということになる.たしかに,佐世保の小6少女殺害事件,奈良の自宅放火事件,秋葉原17人殺傷事件も,両親のどちらかが異様な形で勉強を強いるということが背景因子として指摘されており,本作もこのパターンに倣ったわけだ.しかし,事件の内実にはそれ以上の関心を示さない.
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