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はじめに
国は診療報酬によって医療サービスの料金と薬剤などの価格を決めており,さらに,回復期リハビリテーション病棟における傷病発症後の日数上限などのように,保険に請求できる算定要件も規定している.診療報酬の改定は2年ごとに行われ,閣議で決めた全体の改定幅の範囲で,中医協(中央社会保険医療協議会)が個々の点数を改定している1).医療費抑制のためには,診療報酬を引き下げることが基本であるが,例えば,入院医療の質を高めるための7対1看護のように,コストよりも点数を高く設定して,病院に7対1看護を導入する経済的なインセンティブ(動機)を与える場合もある.
2008年度の診療報酬改定では,回復期リハビリテーション病棟において,日本版のP4P(pay for performance,実績に基づく支払い)が導入された.これは,在宅復帰率6割以上という要件を課したうえで,重症者が一定の割合で改善した場合に入院料を加算するもので,斬新な手法として注目されているが,従来から厚生労働省が行ってきた経済誘導の延長線上にあると言えよう.こうした経済誘導が定着していたため,アメリカで提起された,P4Pによる診療行為の誘導は医師の職業倫理を低下させるという批判は2),日本ではあまり聞かれなかった.
しかし,P4Pはこれまでに導入された点数改定と以下の点で異なる.第1に,施設基準よりも医療の質を直接的にターゲットにしている.こうした観点からP4Pではなく,P4Q(pay for quality)と命名したほうが適当であったかもしれない.第2に,これまで日本における医療の質の確保は,看護師や理学療法士の人員配置基準のように,評価の対象は構造面であったが,日本版P4Pではアウトカムを対象としている.第3に,アウトカム指標の達成率によって,当該病棟の患者全体を加算の対象としている.
本稿では,P4Pがアメリカでどのような経緯で導入され,どのような課題に直面しているかについて解説し,そのうえで回復期リハビリテーション病棟に導入された日本版P4Pの概要と,今後の課題について検討する.
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