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この本は2006年に刊行されたClinical Sports Medicineの第3版の日本語への翻訳本である.原本はオーストラリア,メルボルンのPeter Bruknerとカナダ,バンクーバーのKarim Khanをはじめ,世界12か国で活躍している50名以上の共著者によって書かれたものである.スポーツ医学のなかでも運動器の外傷や障害に対する全般的なアプローチの仕方について,最新のエビデンスをもとに,フルカラーのイラストや写真を多用してわかりやすく書かれている.Part Aでは基本原則として理論的基礎に関して書かれており,その第1章では「スポーツ医学:チームでのアプローチ」として,いろいろな職種の人たちがチームとして選手やコーチにかかわっていく心構えから始まり,「汝のスポーツを愛せよ」というスポーツ医学にかかわるものに対する教訓的な文章で終わっている.Part Bでは各身体部位における問題について痛みのある部位ごとに書かれている.スポーツ医学のテキストとして目新しい内容としては,回復,コア・スタビリティー,鼠径部の慢性痛があげられ,またスポーツ医学では最も重要であると考えられる予防については,全般的な外傷・障害の予防の原則に加えて,最近のトピックスの一つである前十字靱帯損傷の予防についても,具体的なトレーニングの方法も含めて記載されている.また「スポーツ外傷に見間違える症状」という章をもうけ,腫瘍性病変などの鑑別すべき病態についても記載されているのはスポーツ医学のテキストとしては画期的と思われる.参考文献も最新のものが載せられ,さらに推奨されるウェブサイトも記載されているので,学習の幅が広がる.
保存的治療法を中心に書かれていることからも,スポーツにかかわるリハビリテーション科医師,理学療法士や作業療法士,あるいは他の資格をもつアスレチックトレーナーが主な読者となるであろうが,リハビリテーション科以外のスポーツドクターが読んでも学ばされる点が多く含まれている.
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