- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
無医村での保健活動の経緯
平成12年度の介護保険実施に向けて,いま保健・福祉・医療・行政が大きく変化しようとしている。本村においては,平成10年4月に保健福祉課に介護保険係ができ,筆者ら保健婦は介護保険事業計画・介護保険モデル事業などに追われている状況である。保健センターに勤めている保健婦2人もモデル事業に関わり,20人の要介護者の実態調査,そのうち2人のアセスメント,ケアプラン策定などを業務の傍らに行っているが,行きあたりばったりの仕事をしているのではないかと反省する毎日である。
本村のように社会資源が少なく,また経済力も弱い過疎の村で,要介護者や家族のニードを満たすことができるのかどうか考えると不安で一杯になる。細々と暮らしている人たちが保険金を支払い,その上,利用料の一割を負担することができるのだろうかという危惧もある。住民の中には,「安い年金の中から,介護保険料まで支払えない」「病気になった時は,病院に行くので介護保険には入らなくてもいい」などの意見を持つ人が少なくない。50代の男性では,生命保険に加入している者が多く,「生命保険に入っているから介護保険には入らなくてもいい」などと拒否することも十分考えられる。また,村内にはホームヘルプ事業とデイサービスしか整備されていないので,今後介護保険が,本村でどのように行われるのかという実施側の不安もある。
以上のように,種々の問題や混乱の起こることが予想されることも介護保険準備に携わる現在の悩みである。
筆者は,昭和48年に本村に就職した当時から,訪問活動を重視しながら保健活動を展開してきた。老人保健法,地域保健法改正などによって本村における保健婦活動にも変化はあったが,保健婦活動の基本である訪問活動を重要視して今に至っている。
しかし,いま介護保険という大きな変革を前に,これまでの保健婦業務を見直す必要があると考える。介護保険において要介護者・要支援者となると予想される人が本村には約180人いるが,彼らへの活動のほかにも認定されない人たち(約900人)に対しては寝たきりや座りきりの状態にならないための予防活動,痴呆老人の予防活動などが重点課題として考えられる。これらの課題に対して各職種と連携をとって活動することが重要と考えている。また,介護保険に携わる職員は介護保険について,共通理解して業務にあたることが急務と思われる。
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.