Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
森鷗外の『蛇』―罰としての精神障害
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.274
発行日 2009年3月10日
Published Date 2009/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101472
- 有料閲覧
- 文献概要
森鷗外が明治44年に発表した『蛇』(岩波書店)には,鷗外その人を思わせる主人公が信州の旧家で出会った精神障害の女性が描かれている.
理学博士で「名高い学者」の主人公が,信州の旧家に泊まった時のことである.その家に着いて間もなく,主人公は「なんだってこんなそうぞうしい家に泊り合わせたことか」と嘆くことになる.というのも,この大きな家の幾間かを隔てた部屋から,女性の話し声が絶え間なく聞こえてきたからである.しかもその声は,恐ろしい早口で言葉が聞き取れないうえに,相手の言葉が少しも聞こえてこない.「女は一人でしゃべっているらしい」.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.