文豪と死
森鷗外
長谷川 泉
1
1医学書院
pp.312
発行日 1976年4月1日
Published Date 1976/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201045
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森鷗外(1862〜1922)は津和野藩の典医の家柄に生まれたから,生まれた時から医師になることが運命づけられていた.現在の島根県鹿足郡津和野町の出身である.明治維新後の廃藩置県で,藩がなくなり父が旧藩主亀井茲監を頼って上京してから森家の運命も大きく変わった.旧体制の崩壊によって父が典医から一介の開業医になりさがったからである.
津和野藩校養老館の秀才であった鷗外は,結局医学への道を選んだ.東大に学んで陸軍軍医となり,同時に陸軍に入った東大卒の同級生の中では最初に選ばれてドイツに留学した.東大医学部予科に入学する時,年齢不足を補うため2歳年齢を多くしてごまかした.だから東大を卒業した時,実年齢は満19歳であった.もちろん表向きは22歳であった.東大医学部始まって以来の若い医学士であった.鷗外以後にも今日に至るまで,こんな破天荒な人はいない.
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