Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「ぐるりのこと」―壊れることなく,踏みとどまった日本人を描く
二通 諭
1
1石狩市立花川南中学校
pp.1119
発行日 2008年11月10日
Published Date 2008/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101387
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「ぐるりのこと」(監督/橋口亮輔)は,製作の動機を知ることで面白さが倍加する.
監督の橋口は,自身がうつに冒されていたちょうどそのときに「イラク人質バッシング事件」が起き,人質が帰ってきた空港で“自業自得”と書いた看板を持ってニヤッと笑う女性の姿をテレビで見て,日本人はいつからこうなってしまったのかと強いショックを受けたという.この事件は,本誌8月号本欄の「相棒―劇場版」でも取り上げたばかりだが,2004年のことだ.ここは,時間を1990年代に巻き戻して,真っ当な感性をもった人間を立ち上げねばならないとして形象化したのが本作の主人公,佐藤カナオ(リリー・フランキー)と佐藤翔子(木村多江)である.
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