Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「ヴァイブレータ」―人は壊れかけてきたとき,人を求める
二通 諭
1
1千歳市立北進中学校
pp.1201
発行日 2004年12月10日
Published Date 2004/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100690
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前号に続き廣木隆一作品.良質な児童映画の香り漂う「機関車先生」から一転して濃密な性描写が話題となった「ヴァイブレータ」.対極にある両作を貫いているものは人間に対する柔和な眼差しである.
ピンク映画を出自とする廣木であるが,かつてのポルノ・ピンク系映画のノリではない.壊れかけた人間が,人と人が触れあう行為としてのセックスによって回復していくというもので,その安心感,安全感は胎内回帰の如くである.
女,早川玲(寺島しのぶ)は31歳のフリーライター.男,岡部希寿(大森南朋)は中学校もろくに出ていない長距離トラック運転手.この二人が深夜のコンビニで出会う.女にとっては求めていた男であり,男もそれを察知する.
女はアルコール依存で食べ吐き,さらには幻聴に悩まされていて,いじめと不登校というネガティブな記憶だけはしっかり残っている.ヨレヨレ状態であることは間違いないが,ともかくも生を維持するために誰かとつながりたいのだ.
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