発言席
壊れかけた信頼の回復
五十嵐 善雄
1
1二本松会上山病院
pp.89
発行日 1991年2月10日
Published Date 1991/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900188
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精神分裂病には,「世界没落体験」という症状がある。文字通り世界が壊れたと感じ,全てのものとの信頼関係が切れたことに苦しむのである。この異常な体験は,実は現代社会に対する鋭い警告であるように思えてならない。
われわれは,「基本的信頼感」に守られ,世界は安全だと信じきって生活しているのである。オゾン層は破壊され,大気は汚染され,森林は伐採されても危険だとは知らずに,日々の生活を営んでいるのである。こうして考えると分裂病の症状は,決してネガティブなものだけではないと考えさせられる。
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