Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ゲーテの『詩と真実』―高所恐怖症の克服
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.1118
発行日 2008年11月10日
Published Date 2008/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101386
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ゲーテの自伝『詩と真実』(菊盛英夫訳,ゲーテ全集第9巻,人文書院)の第二部には,高所恐怖症をはじめとする恐怖性不安障害に悩まされた若き日のゲーテが,それを今日言うところの暴露療法によって克服したというエピソードが描かれている.
1770年から1771年にかけて,21歳から22歳のゲーテがシュトラスブルグ大学にいたころのことである.当時のゲーテは神経過敏なところがあって,「ややもすると心の平衡を失いがちであった」.その頃のゲーテは「猛烈な音響が厭でたまらず,病的な事物を見ると,胸がむかむかしてきた」といい,「とくに高所から下を見おろすとき,決まってめまいがして,妙に不安をおぼえた」という.
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