巻頭言
今,改めて「完全参加と平等」に思う
太田 喜久夫
1
1松阪中央総合病院リハビリテーション科
pp.825
発行日 2008年9月10日
Published Date 2008/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101321
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「完全参加と平等」 このスローガンは,1980年1月30日に国連総会で決議された国際障害者年行動計画の目標である.当時医学部4年生であった筆者は,同じ大学の障害者サークルの学生から頼まれ,医学部学生大会にこのスローガンを大きく掲げた記憶がある.その時は,まだリハビリテーション医になることは考えておらず,障害者を取り巻く問題について深く認識していたわけではない.謂わんやこのスローガンに込められた並々ならぬ決意や重みには思い至っていなかった.
当時は,ようやくWHO(世界保健機関)によって国際障害分類(ICIDH)が提起された頃であり,リハビリテーション医学においても,障害を機能障害,能力障害,社会的不利など階層的に分析し,日常生活や社会生活における自立に向けた戦略が確立しつつあった頃である.2001年5月,WHOはICIDHを国際生活機能分類(ICF)に改訂し,活動や参加が生活機能を構成する重要な用語として登場した.今では,社会参加はリハビリテーションの主要な目標であると認識されるようになってきたが,1980年において「完全参加と平等」という目標が提起されていたことには,改めて先駆者の方々の聡明さに敬服する.
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