特集 高齢下肢切断の理学療法
高齢両側下肢切断の理学療法の現状と課題
高瀬 泉
1
,
大籔 弘子
2
,
東 祐二
3
,
手塚 勇輔
1
,
中塚 彩子
3
,
占部 貴大
1
,
藤江 寛子
1
,
植木 健太
1
,
黒川 美紀
1
,
藤原 裕子
1
,
陳 隆明
4
,
幸野 秀志
4
Izumi Takase
1
1兵庫県立リハビリテーション中央病院リハビリ療法部
2兵庫県立リハビリテーション西播磨病院リハビリ療法部
3兵庫県立総合リハビリテーションセンター福祉管理部地域支援課
4兵庫県立リハビリテーション中央病院整形外科・ロボットリハビリテーションセンター
pp.1080-1087
発行日 2012年12月15日
Published Date 2012/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102653
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はじめに
近年の生活習慣の欧米化により社会の疾病構造が大きく変化し,糖尿病,高脂血症,高血圧などの生活習慣病を背景とした動脈硬化性疾患に由来する虚血性心疾患や末梢循環障害(peripheral arterial disease:PAD)が増加してきている.澤村による兵庫県下の下肢切断者の疫学調査1)においても,下肢切断者数は変わらないが交通外傷や労災による切断原因が減少し,PADによる切断が70%を占めるようになってきた.長島らの岡山県での調査2)でも同様にPADが増加してきており,切断時年齢も65歳以上が67.5%を占めていた.
TASC Working Group3)による調査では,重症虚血肢に至り下腿切断を受けた患者の2年後の転帰において,二次切断により両側下肢切断へ移行したものが15%であった.また,Evskovら4)によると,一側下肢切断に至った場合,4年以内に反対側下肢を切断するリスクは44.3%にのぼると報告されている.わが国では2050年には高齢者人口が30%を超えるとの試算もあり,今後も臨床現場において高齢両側下肢切断者がますます増加するものと思われる.
本稿では,PADによる高齢両側下肢切断者の理学療法の現状について,症例を提示しながら述べる.
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