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緒言
下肢を含めて骨盤翼の種々のレベルから,手術時に切断する,いわゆる半側骨盤切断は,現在安全に行いうる完成した術式といえるが,その歴史は比較的浅いものであり,なお切断後に種々の問題を残している.
歴史的にみると,1981年,Billrothが骨盤に発生した肉腫の治療を目標として,この手術を行ったのが最初である,と一般に信じられている1).しかし,患者は術後数時間で死亡した.その後,1895年,Girardが大腿骨近位の肉腫に対して,骨盤におよぶ切断術を実施して成功した.1916年英国のPringleが始めて詳細な術式を報告しているが2),手術死亡率75%という高率であった.しかし,その後の術式の改善,輸血の進歩,化学療法の発達などにより手術死亡率は今日ほとんど零となった.この間の経緯については,わが国で加幡(1961)3)の論文に詳述されているので,ここではむしろ半側骨盤切断術後の問題について眼を向けると,術後の患者の歩行能力低下が最大のハンディキャップとなっている.たとえばニューヨークのHiginbothamら(1966)4)は100例の半側骨盤切断術を受けたもののうち,60例の5年後調査を行なっているが,全例が腫瘍による切断であるため,5年生存率は35%と低くなっている.患者の多くは退院後もかなり自立した生活を行なっており,4名は妊娠して無事出産を終えたという.また24名は義足着用の経験を有するが,これは若年者に多く,彼らは年をとるにつれて結局義足を使用しなくなる傾向がある.その理由は義足の重さと装着に要する体力がないことであったとのぺている.
股関節離断に対するカナダ式義足の発表は1954年であったが5),その後,このカナダ式義足を応用して半側骨盤切断術後の義足を作成し,適合がよければ義足歩行による独立生活が十分に可能であるといわれる.腸骨を仙腸関節で離断した場合の義足荷重は軟部組織と仙骨にかかり,Konzenら(1972)6)は4例の外傷性半側骨盤切断者が,義足使用によるリハビリテーションの達成を報告している.ただし,この場合も年齢は14歳から24歳の範囲の若年者症例であった.
筆者らの経験は腫瘍症例に本手術を施行して,まず生命の予後を改善することを第一の目標としながら,術後の義足歩行について,その経過中の評価を行なってきたので最近の症例を中心に報告したい.
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