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はじめに
横浜市立大学附属病院リハビリテーション科(以下,当科)では,がんは入院リハビリテーションの主要な対象疾患の一つであるが,近年,ますます依頼が増える傾向にある.2000年の当科の新患患者1,149例のうち,原疾患が悪性腫瘍であったものは125例10.9%であり,入院患者では110例12.9%,外来患者では15例5.0%であった1).これに対し2007年には,新患で1,445例中,悪性腫瘍211例14.6%,うち入院177例18.3%,外来34例7.1%となっており,入院においてその患者数と割合は明らかに増加した.
2007年211例での原発巣は,頭頸部19%,消化器18%,脳・脊髄13%,血液・造血器12%,生殖器11%,骨・軟部組織10%,泌尿器7%,肺6%,乳腺4%と多彩であった.転移,再発は,転移あり40%,再発例27%であった.主たる機能障害は,全身性機能障害(本稿では体力低下および全身の筋力低下を指す)32%,中枢神経麻痺23%,変形・関節拘縮16%,骨・軟部組織障害15%,リンパ浮腫7%,末梢神経麻痺6%であった.また,悪性腫瘍では障害の重複も多く,全身性機能障害は66%に合併していた(図).
がん患者では,麻痺や痛みはないものの,全身倦怠感や易疲労性のために動作を継続して行えず,日中もベッド上でぼんやりと過ごしている姿をよく目にする.がんは宿主に栄養障害と代謝異常を引き起こし,消耗性の体力低下と全身性の筋力低下を生じさせ,これらが進行すると,がん悪液質と呼ばれる状態となる.体力低下は日常の身体活動を制限し,廃用性の筋力低下や心肺機能低下が生じると,さらに身体活動が制限されるという悪循環を招く.がんの全身性機能障害は,栄養障害,不動,がんの全身性の影響,がんの特異的影響,疼痛,心理的影響,治療に伴う影響などが複雑に絡み合って生じており,がんのリハビリテーションを効果的かつ安全に行うには,全身性機能障害の病態を十分に把握する必要がある1).また,化学療法や放射線療法が並行して行われることも多く,嘔気,骨髄抑制などの副作用により,ときに訓練の中断を余儀なくされる.
本稿では,全身性機能障害の病態と治療に伴う影響を解説し,当科でのリハビリテーションにおける対応とリスク管理について紹介する.
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