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はじめに
歩行障害はパーキンソン病の主要運動障害の一つであり,進行性であるために次第に生活に必要な移動が制約され,転倒の頻度が高くなる1,2).日常生活を想定して行われた歩行の研究では,同じ時間歩行しても健常者に比べ歩行距離が短く,同じ歩行速度で歩行しても健常者よりも歩行速度を持続できないなどの障害が報告されている3).パーキンソン病の歩行障害は最も重要なリハビリテーション医療の対象である4).
症候学的には,パーキンソン病の歩行障害として,①前傾前屈姿勢(flexed posture)で,手の振り,体幹の回旋などの少ない歩行,②小刻み,かつ引きずり足歩行(short shuffling gait),③歩行開始の困難(initial hesitation)およびすくみ足(frozen gait),④加速歩行(festinating gait),⑤姿勢反射の減弱・消失(loss of postural reaction),⑥矛盾性運動(paradoxical movement),などが挙げられている5,6).運動学的には,①下肢運動の速度低下(slowness of leg movement),②歩行速度の低下(slowness of gait),③重複歩距離の短縮(short stride length)が認められ,それに対して④ケイデンス(cadence)が保たれていること,が特徴とされている7-9).運動力学的には,体幹伸展トルク10),股関節伸展トルク11),膝屈伸トルク11,12),足関節背屈トルク13)の低下が指摘されている10,13).
これらの症候や障害はパーキンソン病にみられる中枢神経障害に直接起因するものと,不活動に由来する末梢性の筋力低下や運動障害によるものがある14).パーキンソン病の歩行障害に対する運動療法には,パーキンソン病の病態生理に治療の根拠をもつもの,末梢性障害の改善を意図するものなどがあり,それぞれの領域での進歩がみられている.ここでは,パーキンソン病の運動療法について,いくつかの手技に関する最近の動向を概論する.
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