Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
『維摩経』と障害受容―文殊菩薩の病気見舞い
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.622
発行日 2007年6月10日
Published Date 2007/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100973
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『維摩経』(『世界の名著・2』長尾雅人訳,中央公論社)は,『般若経』や『法華経』などとともに紀元前1世紀から紀元後3世紀にかけて成立したとされる経典の一つであるが,そこには病床にある維摩詰を文殊菩薩が見舞うという場面がある.
維摩詰が病気になったと聞いた仏陀が弟子たちに見舞いに行くように促した.しかし,仏陀の弟子たちは,かつて維摩詰から論破され,やりこめられたという経験があったため,誰一人維摩詰の病気を見舞いに行こうとしない.唯一文殊だけが,維摩詰は「つき合いにくい人で,微妙な理屈に関して弁説をふるう人」ではあるが,「ありのままに,また自分の能力のままに,談論をしてみましょう」と言って出かけたのである.
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