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はじめに
身体障害者手帳(肢体不自由)の交付には,身体障害者福祉法第15条に基づく指定医師の診断書が必要である.診断書には障害名を記載する項目(欄)があるが,診断書に記載される障害名は15条指定医やこれを認定する都道府県・政令指定都市によりさまざまであり,しかも障害者の障害特性を的確に表現する用語が用いられているとは言い難い.厚生省大臣官房保健福祉部企画課が示している身体障害認定基準によれば,障害名はdysfunction,impairmentの状態をその障害部位とともに明記することとされており,その例として上肢機能障害(右手関節拘縮),下肢機能障害(左下肢短縮),体幹運動機能障害(下半身麻痺),脳原性運動機能障害(上下肢不随意運動)等の書き方を標準的としている1).一方,認定基準の診断書の事例では,切断,○○麻痺,上下肢機能障害,肢体不自由などさまざまな障害名を使用しているため,前述した認定基準の障害名と一致しておらず,これらの混乱した内容が診断書の手引きに示されているため,15条指定医が記載する障害名は一層混沌としており,さらにこれらの障害名が実際の障害特性を十分に反映していない可能性もある.
リハビリテーション医療では障害を適切に捉え表現する障害名を用い,リハビリテーション・スタッフ間の共通言語として活用し,患者や障害者に関して共通の基盤に立って討議することが大切であるが,リハビリテーション専門家の間でさえも障害名の概念が曖昧であるのも事実である.障害名の研究を行うことは身体障害者手帳に限定されるものではなく,リハビリテーション医療全体に対して有意義であると考えられるので,リハビリテーション医学専門家の責務の一つとして取り組む必要がある.そこで今回われわれは,診断書(肢体不自由)を作成する際の障害名記載方式に着目し,障害像を適切に反映してリハビリテーション医療や福祉行政に役立つ記載方式を検討する資料として,全国の更生相談所に対し障害名記載方式に関する調査を実施したので報告する.
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