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はじめに
健康関連QOL(Health-related Quality of Life)は医療の質を評価する方法の一つである.すなわち患者に提供された医療がもたらす最終産物を患者の主観に基づいて評価するものである.従来は生存率や合併症発症率など客観的なアウトカム指標が重視されてきたが,近年患者の自己決定権の尊重と相俟って,患者の主観的アウトカム指標も用いられるようになってきた.
表1に,脊髄損傷患者の健康関連QOLに関する過去10年間(1993~2002)の報告1-16)を示した.これらをまとめると,研究動向の特徴の第1は,健康関連QOLが独自のしかも定量的な方法論としてQOL研究のなかに位置づけられつつあることである.ちなみに福原17)によれば,健康関連QOLの測定の対象は患者の健康状態に直接起因する要素,すなわち医療の介入によって直接変化しえる要素に限定される.さらに福原は,健康関連QOLの基本的な要素として,身体機能,メンタルヘルス,社会生活機能の3つをあげている.第2は,GHQ18),Life Satisfaction Questionnaire19),Psychological General Well-Being20),Ferrans and Powers QOL Index21)など,主にメンタルヘルスを測定するスケールを用いたものが少なくないことである.脊髄損傷患者に限らず,リハビリテーション患者では身体機能が著しく低下しているため,従来のスケール(特に身体機能を測るサブスケール)では目が粗すぎてリハビリテーション医療介入の効果が十分に反映されないといった欠点をもっている.それゆえメンタルヘルスを測定するスケールが使用されているのであろう.
われわれは,体幹機能や四肢機能に著しい障害をもつリハビリテーション患者への適用を考えて,メンタルヘルスに限定した健康関連QOLスケール(Mental Health-related Quality of Life Scale;MQS)を開発してきた.本研究は,MQSを用いて脊髄損傷患者の健康関連QOLを測定し,それに基づいて入院リハビリテーションを評価し,さらに健康関連QOLに影響を及ぼすと考えられる要因について検討を加えたものである.
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