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QOLとは何か?
QOL(quality of life)は,近年さまざまな場面で使用されるようになったが,その定義が難しい用語である.使用する分野によって,また使用する人によってそのニュアンスは異なる.例えば,経済学者にとっては貧困の程度を意味したり,都市計画者にとってはある地域の緑地の広さや公共施設の数を意味したりする.医療の分野でQOLが使われる際は,このような広義のQOLを意味することは少なく,疾患によって影響を受け,医療によって変化していく患者の身体的・精神的・社会的な側面に着目される.医療がターゲットとするQOLを,より広い意味でのQOL(overall QOLと言われることがある)と区別するために「健康関連QOL(health related quality of life:HQOL)」という用語が使用される.
健康関連QOLという概念に絞り込むことでoverall QOLと区別することができるが,それでもなお定義が定まっているわけではない.一般的な合意が得られているのは,身体機能(階段を昇れるか,一人で服を着られるか,などの項目),精神的健康(気分の落ち込みや不安などを含む),社会的機能(身体的精神的健康状態によってもたらされた人との付き合いへの影響の程度など)などである.これらは,WHOが提唱した「健康とは,単に病気ではないことではなく,身体的,精神的,および社会的に良好な状態を指す」という健康の定義に類似する.また,役割機能や全体的健康感などもQOLの要素として合意が得られている.さらに,身体症状や毒物による有害事象などのより限定された要素や,性機能,睡眠,食事といった付加的な要素,実存的問題といったoverall QOLに近い要素なども含まれることがある.
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