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はじめに
紀元前,頭痛や痛風などの治療に用いられた電気刺激装置は,シビレエイなど自然界のものであった.1786年,Galvaniの電気刺激による筋収縮の発見,1793年,Voltaによる電池の発明などで,人工的な電気刺激装置が開発され,1831年には,Faradayによる誘導電流発生装置の発明で麻痺筋の電気療法が一般的に行われるようになった.20世紀半ばになると,真空管やトランジスタの発明によって,電流の強さや波形を自由に設定することが可能となった.最近では,エレクトロニクス,コンピュータ技術の進歩により,多チャンネルで複雑な刺激の出力が可能になると共に,素子のチップ化で装置の小型化・軽量化が進み,体内に埋め込める刺激装置も開発された.また,電気刺激の周波数や波形,パルス幅などと痛みや筋収縮との関係の研究が進み,苦痛の少ない電気刺激が可能となった1).
リハビリテーション医療の現場においても電気刺激の応用範囲は広く,① 治療的電気刺激(Therapeutic Electrical Stimulation;TES),② 機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation;FES),③ 筋力増強(Electrical Muscle Stimulation;EMS),④ 疼痛の抑制(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation;TENS)などに応用されており,対象疾患も,脳卒中や脊髄損傷,術後の安静時の筋力維持,除痛などがあり,多岐にわたっている.
特にEMSにおいては,最近,小型で操作性の良い電気刺激装置が開発され,医療分野のみならず一般家庭においても,健康機器,あるいは在宅用リハビリテーション機器として急速に普及してきた.「電気刺激による筋力増強」をうたったEMSベルトは,平成13年秋頃よりテレビショッピングや通販など各方面で宣伝され,人気商品となったことは記憶に新しい.しかしながら,流行に伴い出現した類似商品のなかには,熱傷や強い痛みなどの症状を生じさせるものもあり,その危険性が指摘されている2).本稿においては,このような社会的背景を念頭におき,表面電極による電気刺激装置について概説する.
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