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脳卒中治療ガイドライン策定の経緯・方法
従来,経験に頼るところの多かった医療の分野で,昨今,EBM(evidence-based medicine)に基づく治療を行うべきとの考えが主流となっている.脳卒中に関しては,米国や英国で1994年頃からEBMを重視した脳卒中診療ガイドラインが策定されたが,日本と欧米では人種的な違いや使用できる薬剤の差などがあり,日本の実情とかけ離れている.このため,日本の実情を考慮した独自のガイドライン策定の必要性が提案され,平成12年に日本脳卒中学会,日本脳神経外科学会,日本神経学会,日本神経治療学会,日本リハビリテーション医学会により,合同で脳卒中合同ガイドライン委員会が組織され,平成15年5月に脳卒中治療ガイドラインが発行された.筆者は,脳卒中合同ガイドライン委員会の実務担当者としてガイドライン策定に携わった.
ガイドラインの策定に当たっては,脳卒中一般班,脳出血班,脳梗塞班,クモ膜下出血班,リハビリテーション班に分かれて策定を行った.当初の計画ではリハビリテーションは病型毎に分かれていたが,ほとんどの文献が脳梗塞と脳出血で区別されておらず,リハビリテーションの内容も病型別でほとんど違いがないことから,疾患と別の一つの領域としてガイドラインを策定した.
ガイドラインの策定に当たって,まずガイドラインに盛り込むべき臨床的問題(例:運動障害,失語,認知障害など)を教科書や総説,AHCPR Post-stroke Rehabilitation Guidelineなどを参考に選択した.そして,その臨床的問題に関連する文献をCochrane Library,リハビリテーション関連のRCT(randomized control study)文献リストであるPEDro,およびMedlineや医中誌から検索した.当初過去10年の文献を調べたが,臨床的には重要なことでありながらほとんど文献がないものもあり,そのような項目では10年以上前にさかのぼって総説も含め文献を引用した.各実務担当者が分担して文献を収集し,データベースに,観察期間,対象,介入,エンドポイント,結果の要約を記入した.データベース作成に当たってはエビデンスレベル決定のための講習会が開かれ,その後,各文献に合同委員会が定めた分類(表1)に基づきエビデンスレベルをつけた.次に各臨床的問題について,データベースから引用可能な文献を抽出して,治療についての推奨を作成した.推奨の作成に当たっては,委員,実務担当者が集まり,エビデンスレベルはもとより,臨床的意義や日本での適応可能性を考慮し,合同委員会が定めた分類(表2)に基づき推奨グレードを決定した.
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