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はじめに
「脳卒中治療ガイドライン」は2004年に初めて発刊されて以来,2009年,2015年と5〜6年ごとに全面改訂されてきた.しかし,2000年代半ば以降,脳卒中の分野では遺伝子組み換え 組織プラスミノゲン・アクティベータ(recombinant tissue-type plasminogen activator:rt-PA)静注療法,機械的血栓回収療法,脳動脈瘤に対する血管内治療などの新しい治療手段が矢継ぎ早に開発されて,新たな知見が発信されるスピードが急速に増している.そのため,従来のような5〜6年ごとの改訂では治療概念の変化をいち早くガイドラインに反映させて,臨床現場にお届けすることが困難となってきた.そこで,2015年に「脳卒中治療ガイドライン2015」を発刊した際,2年ごとに新たな情報を加えて追補版を出版していくことを決定した.その結果として,「脳卒中治療ガイドライン2015〔追補2017対応〕」および「脳卒中治療ガイドライン2015〔追補2019対応〕」を2年ごとに発刊して,皆様から好評を博してきた.
「脳卒中治療ガイドライン2021」を策定した際も,2年ごとに最新かつ重要なエビデンスを追加していくことを基本方針として,2023年8月,「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕」1)を発刊した.今回は,2020年1月から2021年12月までの2年間に発表された日本語,英語の論文のうち,「レベル1のエビデンス」,「レベル3以下だったエビデンスがレベル2となっていて,かつ,特に重要と考えられるもの」を採用した.ただし,2022年1月以降に発表された論文でも,特に重要と考えられた論文はハンドサーチ文献として引用した.
今回は,従来のように〔追補2023〕とせず〔改訂2023〕とした.なぜならば,今回の改訂作業に際してあらためてガイドライン全体を精査したところ,直近の2年間に新たなエビデンスの報告はないものの,一部の治療で推奨レベルが現実の医療現場と乖離しているものが散見された.例えば,これまではエビデンスレベルが低いために「考慮しても良い(推奨C エビデンスレベル低)」とせざるを得なかった疾患の一部では,既にリアルワールドでは積極的な治療が広く一般化しており,治療そのものを遂行しないこと自体が患者に不利益をもたらす可能性が危惧された.今後もこれらの疾患あるいは病態を対象としたランダム化比較試験など,エビデンスレベルの高い臨床研究が実施される可能性はきわめて低いと考えられ,当初予定していた「追補」版を策定するに際して,推奨レベルを変更すべきところは変更することとした.今回は〔追補2023〕とはせず,〔改訂2023〕と命名した所以である.以下,各項目における〔改訂2023〕の主な変更点を述べる.すべての変更点を記載しているわけではないことをあらかじめお断りしておく.
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