Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
シュヴァイツァーの『わが思想と生活より』―援助者の上下意識
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.1104
発行日 2006年11月10日
Published Date 2006/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100419
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1931年,シュヴァイツァー(1875~1965)が56歳の時にそれまでの半生を綴った『わが思想と生活より』(竹山道雄訳,理想社)には,彼がアフリカでの人道的な医療活動を決意するに至った事情が記されている.
『わが思想と生活より』では,シュヴァイツァーが30歳の時に医学を学ぶ決心をした時の心境を,「自己の周囲に多くの人間が懊悩苦難と闘っているのを見ながら自分のみ幸福な生活を送るを得る,ということは,私には考え得ないことであった」と語っている.シュヴァイツァーは小学生の頃,「同級生の傷ましい家庭の有様を見,しかもこれを,ギュンスバッハの牧師の家の子らの理想的な家庭生活と比較するとき,深く心を打たれた」という.シュヴァイツァーは幼いころから,周囲の人々の不幸な境遇と比較して自分が幸福な存在であることを感じ,しかもそのことに負い目を感じていたのである.
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