コンタクトレンズ(58)
シュヴァイツァー病院と高橋功博士
長谷川 泉
pp.42
発行日 1965年5月10日
Published Date 1965/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203392
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ノーベル文学賞が,フランスのサルトルにきまったけれども,サルトルはこれを辞退した.それを聞いたランバレネのアルベルト・シュヴァイツァーが,惜しいことだ,貰えるものなら貰って,それをどのように有効に使ってもよいではないかと語ったと伝えられる.
ご承知のように,ノーベル賞の賞金は巨額である.南亜の赤道直下の熱帯にあって,それこそ水と原生林のライ村にあって医療に従事しているシュヴァイツァーにとっては,それだけの金額が寄附でもされたら,あの手術器械も設備できるし,この施設の拡張もできるのにと,いろいろ思いめぐらすことがあったかもしれない.シュヴァイツァー病院は.奉仕によって支えられている.医療施設や,医療器械や医療品なども各国からの寄贈によって,まかなわれている.それどころではない,そこに働く人たち,医師もナースもすべて奉仕である.ゆえに,サルトルのノーベル賞辞退ということは,シュヴァイツァーにはそのようにうつったかもしれない.そして,シュヴァイツァー自身も,ノーベル平和賞を受賞し,その賞金はシュヴァイツァー病院につぎ込まれたから,なおさらそのような感慨があってもふしぎではないといえよう.
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