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はじめに
造血幹細胞移植は,白血病などの腫瘍性疾患に対する根治療法,また,重症再生不良性貧血やリンパ造血系の遺伝性疾患に対する骨髄機能の正常化を目的とした治療法として良好な治療成績をあげている.日本造血細胞移植学会の2001年度全国調査報告書1)によると,急性骨髄性白血病の同胞間移植および非血縁者間移植では,5年生存率が約65%に達している.また,同胞間移植での慢性骨髄性白血病の5年生存率は73%,再生不良性貧血では84%ときわめて良好である.
しかし,造血幹細胞移植では,前処置としての超大量抗癌剤投与と全身放射線照射,無菌室(クリーンルーム)での長期間にわたる隔離や安静,さらに合併症としての全身倦怠感,悪心,嘔吐,下痢,食欲不振,不眠,移植片対宿主病(graft versus host disease;GVHD)などにより身体活動が制限され,また,運動に対するモチベーションも低下するため,全身的な筋力低下2),柔軟性低下3),心肺機能低下4)などの重度の廃用症候群が生じる.
また,このような身体的廃用だけではなく,隔離に身体的安静が加わると抑うつや知的機能の抑制などの精神的廃用も生じやすい5).
これらの状態は退院後の日常生活再開,職業復帰や余暇活動にも悪影響を及ぼし,患者のquality of life(QOL)を低下させることになる6,7).先行研究8)では,移植患者の40%が身体機能回復に1年を要し,30%が体力低下のために移植後2年間は職業に復帰できなかったと報告されている.
そのため,廃用症候群を予防するためのリハビリテーションが必要であるが,どのようなリハビリテーション介入を,どの期間に実施することが効果的であるのか,を十分に検討する必要があり,また,介入効果の評価が必要である.とくに,身体活動性の低下が廃用症候群の発症要因となる造血幹細胞移植患者にとって,身体活動量を的確に評価することが必要である.
Melloら2)は,同種骨髄移植患者に対して運動プログラムを実施し,徒手筋力計を用いて測定した介入前後の上下肢の筋力を指標として介入効果を評価している.Wieringaら9)は,造血幹細胞移植を受けた未成年患者(4~18歳)の移植前後の呼吸機能の変化を評価しており,また,八並ら10)は,造血幹細胞移植患者の廃用症候群に対する理学療法効果の指標として,握力,下肢筋力,運動耐用能,Hb値,柔軟性を検討している.さらに,Hayesら11)は,末梢血幹細胞移植患者の運動プログラムの効果指標として,全身水分量,除脂肪体重,脂肪量などの身体組成を測定している.このように,造血幹細胞移植患者の筋力,柔軟性,持久力などの身体機能や全身水分量,脂肪量などの身体組成に対する評価法はみられるものの,身体活動量という観点からの客観的な評価法はない.
そこで本研究では,造血幹細胞移植患者の入院から退院までの一連の身体活動量を評価するための器具として生活習慣記録機を使用し,その有用性を検討した.
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