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はじめに
脳血管障害,脳外傷,蘇生後脳症などの後天性脳損傷者において,急性期治療後も遷延性意識障害や重度の身体障害を抱えた重度障害者を散見する.このように重度の後遺症が残る場合,家庭復帰後は家族による長期的介護が必要になる.しかし突然生じたこの障害に,家族の戸惑いは計り知れない.患者の受傷前,家族は家事や仕事などに時間を使っていたはずである.患者に常時介護が必要ということになると,家族も生活様式を変更しなければならない.これを負担と感じることも多い1).家庭介護の決心がつくように,準備の期間をもつことが必要である.しかし,リハビリテーション病院の入院も,期間が限定されるのが普通である.例えば3か月の入院であれば,治療目標はその間に達成できる内容に限定される.3か月はたちどころに経過するので,家族とスタッフは有効に時間を使わなければならない.すなわち,入院前に治療内容・目標をしっかり説明し,また入院期間中にも,家族は病院を訪問して,専門家から身体機能障害や高次脳機能障害についての説明を受け,残存能力や機能回復についての見通し,および退院後に受けられる各種サービスについて繰り返し説明を受けることが望ましい2).しかし,これら重度障害者に対する具体的な医療・福祉支援システムは依然構築されていないのが現状である.
神奈川リハビリテーション病院では,1973年に交通外傷病院として開設され,以降,交通事故や多発性外傷後による重度の後天性脳損傷者の在宅復帰支援を実践してきた.今回は,過去4年間に当院で経験した遷延性意識障害者や重度身体障害者の在宅復帰支援について紹介し,その現状と問題点,今後の展望について考察した.
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