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はじめに
日常的身体活動の低下は,高齢者の筋機能の減退を引き起こすことに留まらず,QOL(quality of life)にも影響する.老化に伴う高齢者の筋線維タイプの変化はfastタイプの萎縮に現れ1),それが筋力低下を引き起こす原因の一つになっている.この低下が下肢筋力に強く及んだ場合2-5)は,転倒頻発の一要因となる.とくに,転倒骨折による寝たきりを予防するために筋力の改善は必要である.加えて,これはQOLの改善にもつながることである.しかし,高齢者に適した筋力トレーニングはほとんど見当たらない.
従来型の筋力トレーニング負荷は最大筋力(maximal voluntary contraction;MVC)の60~80%と高く,高齢者には適さない6-10).この高い負荷で誘発しやすい筋線維損傷が起こると,若年者に比べて組織再生能の低い高齢者にとって繰り返されるトレーニングは,筋組織の傷害を生み出す要因となる可能性がある11).さらに,血圧の上昇を招き,心臓の負担を増大させる12,13).
しかし,従来型の軽負荷トレーニングでは筋力の増加に長期間を要する14).軽負荷トレーニングをある期間実施した後の筋力の増加が従来型トレーニング以上に得られれば,高齢者にとって筋損傷および血圧の上昇を抑制した安全性の高い筋機能改善法となる.
これまで与那らは,皮膚冷刺激による低負荷筋力トレーニング効果についての基礎的研究報告を行っている.それは,活動筋の皮膚冷刺激が高い閾値張力の運動単位(high threshold motor units;HT-MUs)を選択的に動員し,かつその閾値張力を低下させるものである15-17).この皮膚冷刺激を用いたトレーニングを行うことで,選択的にHT-MUsの参画を引き出すことになるので,高齢者に特有なfastタイプの非賦活性化を改善することができると思われる.
そこで本研究は高齢者に対する皮膚冷刺激を用いた低負荷筋力トレーニングの有用性を検証するために,高齢者の下肢筋力の低下が著しい膝屈曲筋群(Hamstrings)を対象とした.さらに,応用性について高齢者の筋力トレーニング指導を当該施設の数人のいきがいデイサービス指導員(指導員)が行い,多少のトレーニング指導の違い等があっても筋力の増加が得られるかどうか検討した.
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