特集 高齢者の転倒と予防
感覚・認知機能からみた転倒予防のための生活環境整備
中條 浩樹
1
Hiroki Nakajo
1
1老年病研究所附属病院リハビリテーション部
キーワード:
高齢者
,
転倒
,
感覚
,
認知機能
,
住宅改修
Keyword:
高齢者
,
転倒
,
感覚
,
認知機能
,
住宅改修
pp.29-35
発行日 2019年1月15日
Published Date 2019/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201421
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はじめに
老年人口の増加と医療技術の進歩により入院患者の高齢化が進み,厚生労働省1)の患者調査によれば,全入院患者のうち65歳以上は71.0%,75歳以上は50.7%を占め,実に入院患者の半数が後期高齢者という実態になっている.また退院後の行き先は84.0%が自宅(親族宅等も含む)であり,医療従事者は高い割合で後期高齢者の生活環境整備を経験することになる.
高齢者は筋力や感覚等の身体機能のほか,注意や判断力等の精神機能も低下することがわかっており,これらは転倒の危険因子になり得る.Rubensteinら2)によれば,転倒の危険因子として高いのは下肢の筋力低下(オッズ比4.4)や歩行障害(オッズ比2.9)といった直接的な運動機能であるが,視覚障害は2.5,認知機能障害は1.8と,感覚・認知機能障害も決して無視できない数字となっている.行った住宅改修や用意した福祉用具が運動機能上は使用条件を満たしていたとしても,感覚機能や認知機能の低下により,想定した使い方ができず転倒リスクにつながる場合もあり得る.私たちは高齢者の生活環境整備を経験する際,運動機能を重視するのと同様に感覚・認知機能にも注意を払う必要がある.
本稿では,高齢者の感覚・精神機能の特徴と認知機能障害を踏まえたうえで,高齢者が遭遇しやすい家庭内転倒事故を検証し,環境整備における解決策を提案する.
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