特集 バランス再考
垂直性とバランス
深田 和浩
1,2
,
網本 和
2
,
藤野 雄次
1
Kazuhiro Fukata
1,2
1埼玉医科大学国際医療センターリハビリテーションセンター
2首都大学東京大学院人間健康科学研究科
キーワード:
主観的垂直認知
,
Pusher現象
,
半側空間無視
,
バランス
Keyword:
主観的垂直認知
,
Pusher現象
,
半側空間無視
,
バランス
pp.831-840
発行日 2018年9月15日
Published Date 2018/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201303
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はじめに
ヒトは重力環境下において,視覚,体性感覚,前庭系の情報を統合することで身体を垂直に定位している.この垂直性は,姿勢定位と安定性にかかわる要因として重要視されている1).身体の垂直性は,脳損傷後の運動麻痺や体幹機能障害,感覚障害などによって損なわれ得るが,近年,姿勢定位にかかわる認知的側面として主観的垂直認知が重要であることが指摘されている.これは,自己が感じる垂直位を視覚的・徒手的・身体的に定位する課題であり,半側空間無視(unilateral spatial neglect:USN)やPusher現象により,垂直認知の平均偏倚量(傾斜方向性)や標準偏差値(動揺性)が変容することが示されている.すなわち,自己が認識している垂直軸を誤って認知することや垂直判断の不確実性が姿勢バランスに影響すると考えられている.
本稿では,垂直認知の測定の実際,垂直認知の障害特性とバランスとの関連,および垂直認知を考慮した理学療法介入について概説する.
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