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はじめに
急性期脳卒中患者のリハビリテーションにおいて,近年は脳卒中発症後24時間以内にリハビリテーションが開始されることが増えてきています.「脳卒中治療ガイドライン2015」では,十分なリスク管理のもとに,できるだけ発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く推奨されています1).
厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」によると,2015年1年間の死因別死亡総数のうち,脳血管疾患は11万1973人で全死因の4番目となっており,そのなかでも「脳梗塞」が最も多く6万4523人となっています.そのうち心原性脳塞栓症は発症するときわめて転帰が不良であり,急性期に約10%が死亡し,機能予後も悪いとされています.
心原性脳塞栓症は心疾患により心臓内で形成された血栓が塞栓子となり,短時間で動脈を閉塞し症状が完成するため,「突発発症と突発完成」が発症様式の特徴と言えます.動脈閉塞が急速に起こるため側副血行路の発達が不良で,皮質を含む広範囲の梗塞巣をつくりやすく,脳浮腫の程度が強いことも多いです.臨床症状は意識障害や片麻痺,感覚障害に加えて失語や半側空間無視などの皮質症状が挙げられます.急性期血行再建にはアルテプラーゼ(recombinant tissue plasminogen activator:rt-PA)静注療法と血管内治療が挙げられ,近年はその有効性が確立してきています.
心原性脳塞栓症患者は高齢であり,背景に心疾患を有していることが多く,急性期の脳血管疾患リハビリテーションを安全に実施するにあたっては,脳血管疾患に加えて心疾患に対するアセスメントを行うことが重要となります.本稿では,急性期心原性脳塞栓症患者の心疾患に着目し,脳卒中ケアユニット(stroke care unit:SCU)から一般病棟転棟までの評価,プログラム立案のポイントについて解説します.
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