特集 多分野に広がる理学療法
脊髄損傷者との挑戦—脊髄損傷者専門トレーニングジム
渡部 勇
1
Isamu Watabe
1
1J-Workout株式会社
キーワード:
脊髄損傷
,
J-Workout
,
KNOW NO LIMIT
Keyword:
脊髄損傷
,
J-Workout
,
KNOW NO LIMIT
pp.997-999
発行日 2017年11月15日
Published Date 2017/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201033
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はじめに—その分野にかかわることになったいきさつ
「脊髄損傷」.言葉では知っていても,実際にリハビリテーションを担当したことがある理学療法士は意外と少ないのではないだろうか.筆者もその一人で,「どうしよう!」,これが初めて脊髄損傷疾患を担当したときの心情だった.
病院勤務中,ある一人の脊髄損傷者を担当することになった.彼は頸髄の5番を損傷し,肩と首を動かすことが精一杯の状態だった.筆者にとって脊髄損傷者を担当するのは初めての経験で,どうやって理学療法を進めたらよいか,正直迷った.試行錯誤しながらも彼を担当した4か月間が終わり,筆者のなかに不甲斐なさと無力感がこみ上げてきた.脊髄損傷者専門トレーニングジムである「J-Workout」を知ったのはそんなときだった.
脊髄損傷について調べるなかで,J-Workoutが運営する歩行披露イベント「KNOW NO LIMIT」(図1)の存在を知り,ボランティアとして参加した.筆者はこのイベントで医学の常識を超えた脊髄損傷者の姿を目の当たりにする.イベントのテーマは「脊髄損傷者による歩行披露」.ステージを歩く人たちはみなキラキラと輝き,回復に限界はない(KNOW NO LIMIT)ことを示してくれた.筆者はふとわれに返り,当時担当していた彼の姿を重ねながらステージを眺めている自分に気づいた.そして,再びあのときの不甲斐なさと無力感がこみ上げてきた.このときの出会いが,脊髄損傷者専門トレーニングに携わることとなったきっかけである.
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