特集 歩行の安全性
歩行の安全性にかかわる環境支援
岡村 大介
1
Daisuke Okamura
1
1聖路加国際病院リハビリテーション科
キーワード:
入院患者
,
転倒予防
,
転倒リスク
,
Quality Indicator
Keyword:
入院患者
,
転倒予防
,
転倒リスク
,
Quality Indicator
pp.415-426
発行日 2017年5月15日
Published Date 2017/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200865
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はじめに
入院中の「歩行の安全性にかかわる環境支援」は裏を返せば「転倒を予防する環境支援」と言える.米国の全病院における転倒発生率(‰=件/1,000入院)は1.3〜8.9‰で1),入院患者では虚血性脳血管障害患者の5%2),精神科に入院した患者の10%が転倒し3),がん患者は特に転倒リスクが高いとされている4).本邦でも超高齢社会を迎え,入院患者の高齢化も進み,入院中の患者の転倒(19.7%)は治療・処置(30.2%),薬剤関連(6.5%)・点滴などの抜去(7.2%)と並び院内におけるインシデント・アクシデントの上位を占めるようになってきている5).転倒に伴う大腿骨骨折,頭部外傷などの外傷は患者のADL低下,QOL低下,入院期間の延長を招き,患者の経済的負担も増大するとともに,さらなる医療資源の投入も必要となり,施設にとってもコスト増につながることから,入院中の転倒予防は患者,医療者双方にとって重要な課題と言える6,7).また入院中の転倒経験は退院後も転倒に対する恐怖心(転倒後症候群)として残るとされ8),患者のADL低下を招き,さらなる転倒リスク発生の引き金となる9)(図1).
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