特集 歩行の安全性
歩行の安全性にかかわる神経生理機構
高草木 薫
1
Kaoru Takakusaki
1
1旭川医科大学・脳機能医工学研究センター
キーワード:
前頭-頭頂ネットワーク
,
自己身体の認知
,
予期的姿勢調節
,
皮質-脳幹投射
,
コリン作動系
Keyword:
前頭-頭頂ネットワーク
,
自己身体の認知
,
予期的姿勢調節
,
皮質-脳幹投射
,
コリン作動系
pp.389-396
発行日 2017年5月15日
Published Date 2017/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200861
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はじめに
超高齢化を迎えた先進国では高齢者の転倒・転落事故の急増が深刻な社会問題である.そのため,転倒の防止,歩行機能の回復,そして,安全な歩行を実現するためのシナリオ構築が急務である.では,安全な歩行とはどのような歩行だろうか? それは“環境変化に対応して2足歩行を維持する(転倒しない)こと”であろう.
2足歩行は4足動物の歩行よりもはるかに不安定である.2足歩行にはきわめて高度なメカニズムが必要である.にもかかわらず,ヒトは生後1年足らずで2足歩行を獲得し,特に注意を払うこともなくこれを実行する.そこで本稿では「姿勢と歩行の制御に関与する高次脳機能(姿勢と歩行制御の認知的プロセス)」と「皮質下神経機構による姿勢-歩行の基本的神経基盤(姿勢と歩行の定型的プロセス)」について概説し,「安全な歩行を実現・再建するための考え方」についての私見を記したい.
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