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書評 —島田裕之(編集)—「運動による脳の制御—認知症予防のための運動」
浦上 克哉
1,2
1鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座
2日本認知症予防学会
pp.135
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200467
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今,認知症予防は国民の最も大きな関心事である.認知症予防については,近年いろいろな予防方法がテレビや新聞などを賑わせている.しかし,その多くは科学的根拠が乏しく信頼性が低いことが大きな課題である.認知症予防の方法として運動が良いことは,以前から言われており研究も多くなされてきたが,十分な根拠を示すデータと言えるものは残念ながらなかった.
その運動の有効性について二重盲検比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT)という科学的根拠を持つ方法を使って,その有効性を初めて示したのが国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター予防老年学研究部部長の島田裕之先生である.島田先生が良い運動として推奨しているのがコグニサイズ(cognicise)と呼ばれる方法である.コグニサイズというのは頭を使うこと(認知課題:cognitive task)と運動すること(運動課題:exercise)を同時に行うものである.具体例を挙げると,「しりとりをしながら運動する」というようなものである.実際に行われたコグニサイズの介入研究のデータも紹介してあり,かつ実施時のポイントも明記してあり,文字どおりかゆいところに手が届くようなとても参考になる内容である.
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