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書評 —浅井友詞・中山明峰(編集)—「前庭リハビリテーション—めまい・平衡障害に対するアプローチ」
木村 貞治
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1信州大学医学部保健学科理学療法学専攻
pp.123
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200464
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めまいやふらつきは,人にとって極めて不快な症状であり,日常生活活動やQOLの低下を招く原因となる.日本めまい平衡医学会において,めまいは,安静にしているときあるいは運動中に,自分自身の体と周囲の空間との相互関係・位置関係が乱れていると感じ,不快感を伴ったときに生じる症状と定義されている.めまいは,前庭機能障害などさまざまな原因によって惹起され,周囲や天井がぐるぐる回る回転性めまいと,体がふらつく,真っ直ぐ歩けない,などの浮動性めまいがあるとされている.厚生労働省の調査では,わが国におけるめまいの有訴者数は,約280万人に上ると報告されている.
このように多くの方が罹患されている前庭機能障害に対するリハビリテーションについて,海外では,1940年代にすでに報告がなされ,北米などでは多くの施設において,前庭リハビリテーションの専門の医師と理学療法士の連携による取り組みが行われていると報告されている.他方,わが国の理学療法は,これまで50年の歳月を刻んできたが,前庭機能障害のリハビリテーションの一環としての理学療法の取り組みは,まだ十分には普及していないのが実情であろう.このような状況に鑑み,めまいやふらつきなどの症状を呈する前庭機能障害患者に対するリハビリテーションの実践を普及させていくためには,制度面の整備と併せて,前庭系の構造と機能,前庭系の障害の原因・診断・理学療法評価・理学療法アプローチの実際などについての正確で系統的な理解を深めていくことが重要な鍵になると思われる.
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