講座 ボツリヌス療法・3
バクロフェン髄腔内投与療法—脊髄疾患
根本 明宜
1
Akinobu Nemoto
1
1横浜市立大学附属病院医療情報部
キーワード:
バクロフェン髄腔内投与(intrathecal baclofen:ITB)療法
,
痙縮
,
drug delivery system(DDS)
Keyword:
バクロフェン髄腔内投与(intrathecal baclofen:ITB)療法
,
痙縮
,
drug delivery system(DDS)
pp.655-663
発行日 2015年7月15日
Published Date 2015/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200272
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はじめに
本稿では,A型ボツリヌス毒素(botulinum toxin type A:BoNTA)と同じ時期に効果的な痙縮治療手段として登場したバクロフェン髄腔内投与(intrathecal baclofen:ITB)療法を取り上げる.ITB療法は1984年にPennら1)が報告した痙縮治療で,水溶性で脳血管関門を通過しにくい中枢性筋弛緩薬であるバクロフェンを作用部位の脊髄に投与するため,植込み型のポンプを用いた手術的治療を加えた薬物療法である.
本邦では2006年より健康保険適用となったが,承認後10年でようやく植込み数が1,000を超えた.少し遅れて成人四肢痙縮の適応となったBoNTAと症例数では大きく離されている.しかし,当初は脳神経外科と整形外科に限られていたトライアルがリハビリテーション科,神経内科,小児神経科などでも実施できるようになり,カテーテルの改良で有害事象が減少し2),実施施設も増え,日本中どこでもITB療法を受けられるようになっている3).
本稿では痙縮に対するITBの作用をBoNTAなどのほかの治療と比較,差異を確認し,ITB療法について解説し,具体的な疾患での適応,治療後のリハビリテーションといった観点で概説する.添付文書上の適応としては下肢の痙縮とされ,本邦でも脊髄由来の痙縮への治療が多いので脊髄疾患としたが,脳由来の痙縮についても無視できないので触れることとする.
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