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はじめに
脳や脊髄などの中枢神経が障害されると,麻痺を生ずるのは周知の事実である.麻痺症状は,症例ごとにさまざまであるが,高度な中枢神経障害においては,痙縮を伴うこともよく知られている.痙縮の程度もさまざまであるが,高度な痙縮は,QOL(quality of life)を低下させる要因となる.すなわち,筋トーヌスの増加で関節が動かしにくい,関節拘縮を生じやすい,軽度の刺激で突然の痙攣様粗大運動が起こるため睡眠中に急な粗大運動で覚醒する,あるいは突然の粗大運動のため車いす動作が困難で,車いすやベッドから転落する,などの問題が生じる.歩行可能例においても,歩幅が低下して速く歩けない,段差や坂道の上下が困難などの原因となる.
痙縮の治療として,投薬,リハビリテーションが行われてきたが,高度な例に対しては限界があった.また,髄腔内へアルコールやフェノールを注入し,脊髄や神経根を完全遮断する方法,後根切断術,硬膜外通電法なども行われてきたが,これらのブロック法は神経組織を破壊するため不全麻痺例への応用が困難であり,痙縮再発の問題もある.選択的後根切断術は脳性麻痺などの小児例に適応があるが,成人例では効果に疑問があり一般的ではない.硬膜外通電法も痛みのコントロール,痙縮の減少が期待されたが,その痙縮減少効果は不透明である.ボツリヌス毒素による局所的な神経筋接合部の遮断も有効であるが,その有効範囲はきわめて狭く,体幹から下肢などの広範な部位の痙縮には対応困難である.
これらの状況のなかでバクロフェン髄腔内投与(intrathecal baclofen;ITB)療法が新たに生まれ,近年,保険適応となり,臨床応用が可能となった.本稿では,痙縮に対する新しい治療法,ITB療法について概説する.
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