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少子高齢化が進むなか,将来的に必要とされる保健・医療・福祉サービスを安定的に提供するためには,さらなる社会保障制度の充実とその成果普及が最重要課題である.その役割を担う人材の育成は急務だが,いま求められている人材は「実務上の経験から習得した能力を有する」人材の時代から,「自らの力で課題を見いだし,それを解決する能力を習得した」人材へと変革している.こうした社会的要請を受け,大学の人材育成機能の抜本的改革が求められている.これは大学に対して,学生が主体的にさまざまな事象に興味を抱いて学修に取り組んで欲しいとの期待感であろう.確かに,一般的な大学教育の学部によっては演習や実習という授業形態があるが,教員からの一方的な座学による教育が普通であり,受け身の授業形態と言える.だが近年では,多くの大学でこのような傾向是正のため,“学生が卒業時までに鍛え抜かれた力”を習得する課題を掲げて教育改革が進められている.
さて,理学療法士を育成する大学の課題はいかがであろう.特徴的なカリキュラムとして810時間以上にも及ぶ臨床実習がある.これは主体的に取り組むべき必要不可欠なカリキュラムであるが,臨床実習教育者からは「学生に積極性がない」との指摘を頻繁に受ける.これは「自らの力で課題を見いだし,それを解決する能力」の不足によるものであろう.その能力を補完するために,筆者は「アクティブ・ラーニング(active learning:AL)」に注目している.これは学生の能動的な学修活動への参加を触発する授業や学修法であり,自発的に学修テーマをみつけ,課題解決への思考過程を身につける教育方法である.ALとは,タブレット端末やクリッカーといった情報通信技術(information and communication technology:ICT)を導入しただけの授業を指すものではない.学生同士が課題についてディスカッションを行い,仮に解答のない課題についてでも,最も信憑性のある解を見いだす過程を学びの基盤とするものである.ICTは,あくまでもALのツールの一つであるとの認識が必要である.
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