連載 病棟の遊びをデザインする・1【新連載】
いま,なぜ病棟に遊びを求めるのか
多田 千尋
1
,
高齢者・障害者の遊びデザイン研究部会
1芸術教育研究所
pp.824-825
発行日 1996年9月1日
Published Date 1996/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905168
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江戸時代の母親たちは,子どもの腰に六つの瓢箪をぶら下げて,我が子の健康を願ったといわれている.六つの瓢箪の「むひょう」(六瓢)を「むびょう」(無病)と読むことで,無病息災と結び付けていたわけだ.また,農家の軒先には6枚の羽がついた風車もよく掲げられていた.1枚1枚の羽には赤や青の鮮かな色使いで俵を表現するデザインが施されていた.これも6枚の俵の「むひょう」(六俵)を同じく無病息災に結びつけていて,子どもから病魔を取り払うお呪いとなっていた.
このように,日本の郷土玩具をみると,子どもの健康を願ったおもちゃが多いことに驚かされる.庶民たちは病に打ち勝ち,健康を求めることに,巧みに遊び心を取り入れていたわけだ.こうしたユーモアの精神は一般家庭にて,培われていたものではあるが,医療・看護の分野でも大いに取り入れていく意味はあるのではなかろうか.ユーモアは人を元気にさせる栄養剤でもある.身体や心を癒す場所にこそ積極的に求めたいものである.
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