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どういう星のめぐりか,昨年と同じ時期にこの編集後記を書かせていただいております.本号がお手元に届くころには本格的な冬を迎えつつあることと思います.2013年が過ぎ,2014年は変わらないたたずまいをみせてくれるでしょうか,それとも何やら怪しげな秘密を守らねばならない世の中でしょうか.
今特集は「発達障害児の理学療法と生活指導」です.まず市川論文では「発達障害はなくさなければならないものではなく,一つの特性とみることもできるもの」との考え方が冒頭に提起され,発達障害の数の多さ,外見からの問題点のわかりにくさ,障害の存在の境界の不明確さなどの特徴を持つと指摘されています.このことを背景として「生きにくさ」が生じてくるが,早期対応が必要ではあるが生活に根差した育児の延長として行われることが受け入れやすいとされています.長谷川論文では「低出生体重児」の生活指導について,抱き方のポイントやポジショニングなど具体的例が示されています.楠本論文では「整形系外科手術後」の理学療法と生活指導について,股関節筋解離術,頚髄症に対して行われる頸部筋解離術を取り上げ,症例を紹介しつつ解説されています.永井論文では「摂食嚥下障害」について,食べる力の発達,摂食・嚥下障害の評価,アプローチに関して各機能の獲得時期に応じた対応が示されています.また,食べる力を育てる目的は,定型発達に近づけるのではなく,一人一人が持つ力を効率よく発揮し,安定して生活することであると述べています.鶴崎論文では,「自閉症スペクトラム障害」について最新の知見が示されています.理学療法の対象としてのASDおよびPDDへの認識は世界的にみても高くないと思われ,評価方法や理学療法アプローチについても確立したものはなく,その理由はASDやPDDが中枢神経系の疾患であり早期発見・早期介入の必要性があるというコンセンサスが得られたのが比較的最近であること,その症状が行動やコミュニケーションの問題が大きいために運動面を中心にアプローチする理学療法は必要ないと判断されたためとではないかと指摘しています.このように,今特集の守備範囲は広く,多くの発達障害児にかかわる理学療法士にとってアップデートな内容になっています.今号では,入門講座「拘縮:難治性の手の拘縮」において肩手症候群,橈骨遠位端骨折後の複合性局所疼痛症候群に伴う手の拘縮,Volkmann拘縮,Dupuytren拘縮の理解と運動療法の実際が解説されています.講座「低侵襲心臓手術と理学療法」では低侵襲心臓手術(minimally invasive cardiac surgery:MICS)が紹介され,その究極形であるda Vinciシステムについて詳述されています.大変興味深いのでぜひ一読ください.
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