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この後記を執筆している2011年12月12日に,今年の漢字が発表されました.2011年の漢字は「絆」でした.2011年3月11日以降,わたくしたちは日常の平凡さがどれだけ大切か,家族や友人たちの「絆」がどれだけ重要か,さまざまな思いを抱いてきました.どのような慟哭であっても,その喪失に向き合う痛切には及ばないのだと感じます….
本特集は「慢性疼痛への包括的アプローチ」です.大道論文に示されているように,「痛みは主観的なものであり,これまでの…情動的体験に」修飾され,複雑な病態を持つとされます.このような複雑さへのアプローチが「包括的」の意味するところであり,学際的な「痛みセンター」の重要性が指摘されています.住谷論文では,慢性疼痛のメカニズムに関して,特にその脳内機序の観点から,幻肢痛におけるミラーセラピーの効果が論じられています.ミラーセラピー自体は特別な機器を必要としない臨床的方法なので,大変興味深いものです.櫻井論文では,理学療法士に関連性の高い「筋機能障害」と慢性疼痛の関係について運動時痛による評価アルゴリズムが紹介されています.白井論文では,脳卒中後の中枢痛(central post-stroke pain)と複合性局所疼痛症候群(CRPS)についての,臨床的特徴,評価法と理学療法の具体例が示されています.増田論文ではがん症例における慢性疼痛の問題が論じられています.主要な臓器におけるがん性疼痛の特性が示され,これらに対する理学療法アプローチが紹介されています.相澤論文では,切断症例に認められる慢性疼痛である断端痛と幻肢痛が取り上げられ,様々な誘因についてのわかりやすい解説と理学療法アプローチとしてTENSなどが紹介されています.いずれの論文も最新の知見に基づき多方面にわたり,慢性疼痛に関してまさに包括的といえる内容になっています.
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