講座 産業衛生・1【新連載】
産業衛生領域での腰痛問題―福祉・医療職場での新たな腰痛予防対策
垰田 和史
1
Kazushi Taoda
1
1滋賀医科大学社会医学講座衛生学部門
pp.929-936
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106450
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はじめに
腰痛は多くの労働者が罹患する職業性疾患であり,患者の苦痛だけでなく休業等に伴う社会経済的損失も大きいため,その予防が先進国に共通する課題となっている.わが国では近年,高齢者介護施設を中心とする保健衛生業での腰痛の増加が深刻な問題となっており,2013年6月,厚生労働省は19年ぶりに「職場における腰痛予防対策指針」(以下,指針)の全面的な改訂を行った.旧「指針」では,「重症心身障害児施設等における介護作業」と限定されていた職場・作業が,新「指針」では「福祉・医療等における介護・看護作業」全般に適用が拡大され,介護・看護作業で「原則として人力による人の抱上げは行わせないこと」が指示された.
「指針」で「福祉・医療等」とされた職場には,高齢者福祉施設や病院・診療所だけでなく,保育所や特別支援学校,障害児者施設が含まれる.対象となる職種には介護系職種だけでなく看護師,保育士,教員などが該当する.「指針」で新たに対象となった業種・職種は,理学療法士とかかわりの深い領域でもある.本稿では,産業衛生領域での腰痛問題および「指針」で指示された腰痛予防対策を概説し,福祉・医療職場における腰痛予防活動に関連して理学療法士に期待するところを記す.
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