特集 腹痛,腰痛の診断
整形外科領域の腰痛
石田 肇
1
Hajime Ishida
1
1日本医科大学整形外科学教室
pp.1001-1004
発行日 1970年11月10日
Published Date 1970/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204303
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はじめに
運動器の形態と機能を対象とする整形外科領域においては,腰痛はきわめて重要な部門を占めるものであり,年間を通じ,外来患者の過半数は,腰痛あるいは,腰背痛に関連した主訴をもつて来院する。脊柱は,躯幹の支持組織として,安定性と共に,運動性が要求され,殊に腰椎では,二本足直立歩行する事実と相まつて,腰椎の前彎および主として前後屈の運動が強制され,他方,われわれの姿勢を維持する基本として,この腰椎前彎と適度の骨盤傾斜により,直立位を代償的に保持しているのである。姿勢の維持に重要な要因としては,このように脊柱全体のバランスのとれた矢状面の生理的なS字状の彎曲の他各椎体,椎間板,小関節,靱帯の健全であるとともに,特に腹筋および背筋による筋性固定が重要であり,ともすれば整形外科領域の腰痛を論ずるに当つて,X線上に見られる骨,関節の変化のみに目をうばわれ,筋肉の重要性をないがしろにしがちである。さらに,脊柱と骨盤,下肢各関節の相対的な軸位の関係すなわち,アライメントが正しいことが姿勢の保持に特に重要である。1例を挙げるならば,腰痛の原因が,扁平足障害という足部のアライメントの異常によつたり,下肢長の異常による骨盤傾斜によることのあることは日常経験するところである。
従つて整形外科領域の腰痛で,まずあげられることは,姿勢の異常すなわち不良姿勢と結びついた腰痛のあることが指摘され,脊柱のみならず,骨盤,下肢とのアライメントの異常も腰痛の原因となりうるという事実である。
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