特集 運動障害がある場合の内部障害への対応
運動障害を有する患者の嚥下障害に対する理学療法
吉田 剛
1
Yoshida Tsuyoshi
1
1本島総合病院リハビリテーション科
pp.947-953
発行日 2002年12月15日
Published Date 2002/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106176
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はじめに
Davis PMは著書である『STEPS TO FORROW』の中で‘忘れられた顔’という章を加え,理学療法士として日々接していて顔面麻痺があるのを見て知っていても,上・下肢の麻痺や歩行に治療時間の多くを割き,問題点としてクローズアップしていないことを指摘している.
嚥下障害についても同様で,嚥下障害により誤嚥性肺炎を引き起こしてから呼吸理学療法を行うことは多いが,嚥下運動障害として真正面から取り組む報告は少なく,言語聴覚療法や看護に依存しがちである.
また,嚥下障害へのアプローチには,食物を使う直接的アプローチと食物を使わない間接的アプローチがあるが,歩行障害に対する歩行練習と歩行を阻害する因子へのアプローチにたとえることができる.すなわち歩行練習という直接的アプローチの反復だけでは十分な問題解決はできず,歩行阻害因子への間接的アプローチだけで直ちにパフォーマンスが改善するわけではない.間接的アプローチで運動しやすい準備をしてから,直接的アプローチを行いパフォーマンスにつなげることで初めてタスクに合った活動ができるのである.理学療法士が嚥下障害にかかわる場合,間接的アプローチが中心になるが,これが準備であることを認識しパフオーマンスにつなげるための段階をどう準備するか考える必要がある.
脳血管障害(以下,CVA)でもワーレンベルグ症候群のように歩行可能な重度嚥下障害者がいるが,本稿では,嚥下障害を概観したうえで全身の運動障害を有する例を対象として,嚥下運動障害との関係を考えてみたい.
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