特集 運動障害がある場合の内部障害への対応
運動障害を有する患者の全身持久力低下に対する理学療法
有薗 信一
1
,
高橋 哲也
1
,
千住 秀明
2
Arizono Shinichi
1
1群馬県立心臓血管センター心臓リハビリテーション室
2長崎大学医学部保健学科
pp.917-924
発行日 2002年12月15日
Published Date 2002/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106171
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
全身持久力とは,「重心の移動を伴う連続的あるいは不連続的な力やパワーの持続能力」と定義されている1).また,全身持久力は体力(行動体力)の構成要素のひとつであり,他の体力構成要素には,筋持久力,最大筋力,柔軟性,平衡感覚,敏捷性,身体組成などがある.これらの体力構成要素はそれぞれ独立した因子であるため,理学療法では,ただひとつの体力構成要素だけに注目するのではなく,各体力構成要素にも配慮しながら,評価・治療をしていく必要がある.
実際に理学療法の対象となる内部障害をもつ患者は,肺気腫や心不全などの原疾患だけではなく,加齢の影響やdeconditioningによる筋力低下,バランス能力低下あるいは脳血管障害や変形性膝関節症などによる運動障害を伴っていることが多い.また,理学療法の対象となる患者は,発病前や手術前に比べADL制限や身体活動量の低下により,筋力や全身持久力などの体力が低下している.近年,対象患者の高齢化が進み,加齢の影響により体力が低下した患者も増えてきている.しかし,理学療法では全身持久力が評価されることは少ない.この理由として,運動機能に障害がある場合,全身持久力をどのように定義するかの検討が不十分なこと,また,主として健常者を対象に開発されてきた全身持久力の測定法をそのままの方法で適用することが困難なことが挙げられる2).
本稿では,運動障害のある患者に対する全身持久力の評価の必要性や評価法の特徴や注意点について説明する.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.