特集 理学療法の展望2006
第Ⅱ部 理学療法の発展と課題
嚥下障害の理学療法
吉田 剛
1
1本島総合病院リハビリテーション科
キーワード:
嚥下
,
姿勢
,
喉頭運動
Keyword:
嚥下
,
姿勢
,
喉頭運動
pp.1156-1157
発行日 2006年12月1日
Published Date 2006/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100722
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1.嚥下障害研究の近年の発展と現状
嚥下障害は,小児から高齢者までの脳障害や神経・筋疾患,舌がん術後など広い範囲で,生命維持に直接関わる問題として注目されてきた.近年は,栄養サポートチーム(NST)の登場で,理学療法士も関与することが増えている.脳卒中患者の約半数は,初期に嚥下障害を併発し,唾液処理の不良による誤嚥性肺炎は生命予後を左右することが多い.胃瘻栄養へシフトして食物誤嚥は減少しても,唾液処理についての根本的解決策は見当たらない.
嚥下についての研究は,メカニズムの解明から,代償的嚥下法の開発など様々な報告がある.評価手段として,ビデオ嚥下造影検査(VF)やビデオ内視鏡検査(VE)が用いられるようになってからの進歩は著しい.近年Palmerらは,プロセスモデルを用いて咀嚼を伴う嚥下の動態を説明し,VF時に咀嚼負荷条件を追加する必要性について示唆を与えた1).また,Shakerらが1997年に提唱した喉頭挙上不全による食道入口部開大不全に対し,頭部挙上練習で舌骨上筋を強化する方法2)は,本邦でも取り入れられている.2005年にBurnettらは,嚥下に合わせて自分でスイッチを入れる練習後に針電極による喉頭挙上筋への電気刺激療法を行い,その効果を報告した3).その際,表面電極法では逆に喉頭が下制したという報告もしており,われわれにとって注意すべき示唆が含まれている.2003年のStambolisらの報告4)は,VFで頸部固定によっても嚥下運動が影響を受けることを示唆しており,後述した筆者らの嚥下運動阻害因子に関する仮説を裏付けた.
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